「起きなさい。起きなさい!?」

 2010年4月25日です。こんにちは、ストロング宮迫です。

 日本人宇宙飛行士の山崎直子さんが大きな話題になっている
 ようですね。

 その話題の1つがご夫婦のことのようで、

 東京新聞の見出しは、
 「夫婦は長い時間をかけて話し合い、家族は再び一つになった」
  
 産経新聞は、「宇宙夫婦、夢がつないだ絆」などなど

 新聞によると、山崎さんご夫妻は、2000年に結婚し、2年
 後に長女を授かったそうですが、2003年のコロンビア号空
 中分解事故を機に、日本人飛行士の訓練計画が大幅に変更。

 このことで夫婦の危機を迎えたと新聞は伝えています。

 2010年4月5日 東京新聞「離別危機越え家族一つに」 
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 妻がロシアで長期訓練をする間、大地さんは仕事と育児、両親
 の介護に奔走したが、父卓夫さんは04年2月に他界。

 間をおかず、妻の二年間の米国出張が決定。

 家族が離れ離れになるのを避けるため、大地さんは会社を退職
 した。

 渡米後は配偶者ビザでは就労ができず、無力感にさいなまれた。

 心療内科に通う一方、仕事一筋の妻と口論が絶えず、実際に離
 婚調停も行った。
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 その間の物語をご主人の大地さんが「宇宙主夫日記」という本
 で赤裸々に記しているとか。

 「宇宙主夫日記」は読んだことはないのですが、

 2010/4/6 J-CASTニュース 「妻は宇宙へ・夫は家庭へ」には
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 夫は自らの著書に

 「直子と私の間が微妙にギクシャクし始めた。彼女のまず仕事
  ありき。そのために家族が犠牲になってもしかたがないとい
  う考え方には納得いかなかった」

 と綴っているという。
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 宇宙飛行士の家でなくても、この手の話は今は珍しくなくなっ
 ていますよね。

 男女にかかわらず、仕事を持ち、その分、家事や子育ての役割
 分担も必要になってくる。

 妻のほうが年収が高いという家庭だって、出てきています。

 母子家庭、父子家庭も珍しくはなく、時代の移り変わりの中で
 新しい家族の「カタチ」を今、私たちは模索しているのかもし
 れませんね。

 こうした夫婦の話を耳にすると、いつも思い出すエッセイがあ
 ります。

 隆慶一郎さんの「時代小説の愉しみ」に出てくる「人生は間違
 いじゃなかったよ」の話で、以下に抜粋して紹介しますと、
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 ・・・福井友栄さんの新聞記事を読んだ。

 ノーベル賞を受賞された福井謙一氏の奥さんである。もともと
 夫君と同じ数学をやっていられたのに、結婚と共に断念。

 夫君の裏方に徹して、つまり専業主婦としての生活に没頭して
 こられた女性である。

 その記事の中に注目すべき言葉が二つあった。

 一つは、

 「同じ理系で夫を支える意味を納得できたからやったこと」

 という言葉であり、もう1つは、

 「あの賞(ノーベル賞のこと)は、人生が間違いじゃなかったよと、
  仏様の光明のように、遠くからやって来た」

 という言葉である。

 二番目の言葉を読んだ時、僕は不覚にも涙がこみ上げて来て
 どうにも仕方がなかった。

 なんという素晴らしい生き方かと、腹の底から思った。
 同時に羨望の念に震えた。

 自分の人生が間違いじゃなかったよ、と仏様に告げられたよう
 に思える人が、今の世に何人いるだろうか。特に専業主婦の中
 に、である。

 現代はまさしく逆の反応を示している。自分の人生は間違って
 いた、と思いこみ、あるいは思ったふりをし、別の人生に走る、
 あるいは走ろうとするポーズを示す専業主婦に満ち満ちている。
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 この問いは、専業主婦だけではなく、仕事を持っている人にも
 等しく投げかけられた問いだとストロングは思いますが、いか
 がでしょう?

 隆慶一郎さんはこのエッセイの最後で女性だけではなく、男性
 にも問いかけます。

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 ・・・自分の人生は間違いじゃなかったよ、と思わせるものは
 何だろう、と考えこんでしまう。

 それは形はさまざまであろうとも、結局は亭主の側も、俺の人
 生は間違いじゃなかったと、言えることしかないだろう。

 そして、今、現在、声を大にしてそういえる亭主が何人いるだ
 ろうか。
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 と。

 隆慶一郎「時代小説の愉しみ」 


 えっ、配偶者がノーベル賞を取れるような人だったら、私も頑
 張って支える側にまわるって!?

 ホントですか? 

 「本当に支えられるかどうか?」をその福井友栄さんが書かれた
 本「ひたすら」から少し長いですが、紹介しましょう。

 「ノーベル賞受賞者の妻」を体感ください。

 「ひたすら」福井 友栄  

 戦後、夫謙一さんとの新生活が始まってからは、
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 夫のほうは・・・・毎日毎晩、計算に熱中し始めていた。

 毎朝、起きると、机上に数式で埋まったザラ半紙が3センチくら
 い積まれている。

 とくに、結婚数年間の、計算につぐ計算の姿は脳裡に焼きつくよ
 うに残っている。

 この頃、路上ですれ違っても、ほとんど私に気づくことはなく、
 背後から声をかけると、夢から醒めたような表情をする。
 ・
 ・
 ・
 今思い返してみると、この頃の数年間の記憶は明瞭で、鮮やかに
 思い出すことができる。

 ある日の夜半か未明の頃、隣の小さい部屋で計算をしていた夫が、
 私の寝ている布団の衿を小さく振り動かし、声をかける。

 「起きなさい。起きなさい」

 何事かと半睡のまま起きてゆくと、数十枚の計算用紙の最後のも
 のらしい一枚の半紙を手に持ち、笑みを顔一杯に浮かべて私に見
 せる。

 「これきれいだろう! きれいだろう?」

 その最後の一枚は、紙幅一杯長い数式が、一段一段短くなってゆ
 き、最後は3センチくらいの単純な数式で終わっている。

 数式全体は、長めの直角三角形で、私にもその美しさはわかる。

 「ほんときれいね」と言って寝てしまうが、この経験が同じパタ
 ーンで数回繰り返され、時には眠いのでお愛想で「きれい、きれ
 い」と言ったこともある。
 ・
 ・
 この夢うつつも未明の出来事が、三十年後にノーベル化学賞にな
 るとは、神のみぞ知る。

 当時、私は起き出しては、「きれいね」と同意していてよかった
 と思う。

 ところが夫は。「天は二物を与えず」の諺どおり、考える以外の
 日常性の不器用さには信じがたいところがあった。

 戦後の東海道線は混雑し、上京のたびに夫は席を取ることができ
 ないのである。行列に並んでいても、必ずはじき飛ばされ、最後
 の最後になるので、徹夜で並んだ朝などは心配でならない。
 ・
 ・
 バスなどは私が乗れても、夫は乗れないで取り残される。
 ・・・これは、新幹線が指定席になっても時々起こったのが信じ
 られない。
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 子供が小さかった頃、ふたりの子どもを連れて大阪に行った帰り、
 地下鉄の自動販売機で、切符がどうしても買えないで立ち往生し
 たらしい。下の娘は、父親と外出した時、お家に無事帰れるかい
 つも心配していたという。
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 ストロングが、夜半か未明に「起きなさない!」なんて奥さんに
 数式出したりしたら、ビンタでは済みませんよ!!

 この技は繰り出してくるでしょうねえ・・・
 でも、それじゃあ、ノーベル賞にはならないわけで。

 福井友栄さんは、
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 家庭の本質は、きっと家庭における人間関係のあり方の土台が大
 事なのだと思う。

 私はたぶん無意識下で、夫が常に安定した雰囲気の中で、いつで
 も、考えを集中持続できる土台がいちばん重要だと感じ、それを
 作ろうとしていた。
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 と。

 どんな仕事でも、それが「専業主婦」という仕事でも、覚悟と決
 意をもった仕事ならば、大きな実を咲かせる「仕事」になりうる
 のではないでしょうか?

 「人生、間違いじゃなかった!」そういえる人生を送りたいもの
 です。

 そのためには目の前の「仕事」を一生懸命こなすしかないかも?
 ですかね。


 隆慶一郎「時代小説の愉しみ」 

 福井 友栄「ひたすら」     

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